THE STORIES IN SWITZERLAND

2000年4月27日 スイス軍の夜間演習
 ドライヴ旅行の3日目の宿泊地、チナールの村には、この日、多くの兵隊さんがいました。「戦略的にさほど重要とも思えないこんな山奥に基地でもあるのかな?」とか思いましたが、村の奥の方に軍用ジープやトラックが止まっていて、演習をしているのだという事が分かりました。スイスでは、よく兵隊さんを見かけます。始めてスイスに来た日に、ジュネーヴのローヌ川沿いの道路で、小銃を背中に担いだ人がモペット(ペダル付の原付バイク)で疾走しているのを見て、仰天した事があります。兵役のあるスイスでは、成人男子のほとんどが銃を所持しているとは言え、これには驚きました。

 スイス各地で軍隊の演習をしているのは知っていますし、演習の銃声を聞いた事もありましたが、見たことはありませんでした。夕方3時ごろに村に到着してから、通りやホテルのレストランでも兵隊さんを見かけ、本当にたくさんの兵隊さんが駐留しています。
 滞在しているホテル「Pointe de Zinal」のレストランで夕食をとった後、すっかり暗くなった夜9時ごろに、フリースを着込んでひとりで外に出てみました。通りには人っ子ひとりいません。メインストリートに面したお店やホテル、レストランなどの明かりが暗い谷底を彩っていました。ホテルのレストランにもスイスビール「カルディナール」の看板が光っていました。灯りの消えた観光案内所の前に、ぱらぱらとめくれて表示するデジタル時計があり、気温も時間と交互に表示しています。時折り、「パタパタパタ…」と表示板の換わる音が聞こえてきます。気温を見ると9℃でした。「寒いなぁ…冬の気温や。」
 何処からともなく、低い唸りのような音が聞こえました。それは静まり返った谷の奥から聞こえてくるみたいです。谷の奥を見てみるとメインストリートの先の上空に、ポッと花火が上がったと思いました。「こんな時期(観光シーズン・オフ)に花火…?」しかし、その花火は開きません。花にならないのです。明るい光の玉でした。

Hotel-Restaurant Pointe de Zinal

 「照明弾や!」そう気付くのに時間はかかりませんでした。…ドン…!また照明弾が上がりました。二つの照明弾が、空中をゆっくりと降下しながら、岩の山肌を照らしています。タタタタタタ…。「おお?!」自動小銃の銃声が聞こえました。その時、初めてそれが夜間演習だと分かりました。…ドン…!しばらくして、また照明弾が上がりました。

 間近に見てみたかったのですが、近くに行く事はやめておきました。そこからしばらく演習の様子を眺めていると、随分と身体が冷えてきたので、ホテルの部屋に戻る事にしました。何時間くらい演習を続けるのでしょうか?兵隊さん達も大変です。部屋に戻ってからも、窓を開けると演習の音が聞こえていました。
 それにしても夜間にまで演習とは、だてに軍隊を持っている訳ではない事が良く分かりました。多くのスイス人が軍隊はもう必要ないと思い始めていると聞きますが、数年前の国民投票で、軍隊はまだ保有する事に決まりました。
 軍隊の無くなる日はいつ来るのでしょうか?

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